2008年08月02日

明後日の時代-6

(5)より続き

 みなさんいかがでしたか、短い時間でしたが、本当にいい意見が出たと思います。ここでそろそろ自分の時間はまとめていきます。

 私が農業を実際に始めて、周りの農家をみて思ったのは農家は意外と豊かだということ、もちろん現金収入はそんなにないかもしれませんが、暮らし自体はとても豊かだと思いました。

 今の日本は生きていくのにとてもリスクの高い国だと思います。

 農家は百姓といいました。今は差別用語ということで使わなくなりましたが、個人的に好きな言葉です。この百姓、元々は百の姓、百の仕事をしなさいということです。田んぼを作るなら畑も。畑をするなら漁に出なさい。冬は縄やぞうりを編みなさいということです。

 これはつまりリスクを分散しなさいということなんですよね。自然相手の農はいつなにがおこるか分かりません。その時に備えよということです。

 先ほど日本はリスクの高い国だといいましたが、その証拠が自殺者の数です。年間3万人、自殺未遂者はその10倍の30万人といわれている国がリスクが高いと言わずして何というでしょう。

 これは今の日本が生活力=お金になっているのも大きな要因だと思います。そしてそのお金を得る手段が特に会社員の場合、ひとつに集中してしまっているので、リストラされたりすると絶望的になり自ら命を断ったりするのではないでしょうか。

 農で食を直接得るということは、金額的にはたいしたことはなくても安心感は何にも変えられないところがあります。もし自分の勤めている会社が社会的に良くないことをしている時、そこでリスクの分散がされていれば言うべきことは言えるのではないでしょうか。つまりリスクの分散が出来ればもっと自分らしく生きられます。
 
 農家は脈々と何千年もしたたかに続いてきました。戦国時代や明治維新、世界大戦など歴史の表舞台、表面が荒波の時でも農家はジッと海洋深層水のようにしたたかに生きてきました。ちなみにしたたかとは「強か」と書きます。

 今、少し前の日本人の精神性が見直されてきています。今から急にその時代の精神性に戻ることは出来ませんが、その国の昔からある宗教や精神性はすべてその地の食を得る手段から来ています。(狩猟はプラス思考、勝ったものが正義。農耕はマイナス思考、水を共有することから和が大切にされてきた。)

 日本の場合はまさに農耕、特に稲作です。「土」に触れて、自然にはかなわない、生かされてると実感する、感謝とそして畏怖を感じてもらうことが日本人の精神性を取り戻すのに一番有効ではないかと思っています。

 有名な話ですが、アインシュタインが日本に来て、いち市民が朝、太陽に向かってお祈りする姿に、世界を救うのは日本の精神性だと感動したそうです。

 うちの母も昔から朝、太陽と白山に手を合わせていました。小さい頃は何をしているのだろ~?と思ったものですが、農業を始めていつの間にか、私も毎朝太陽に手を合わせるようになりました。

 話は大げさになりましたが、これから農は教育、介護、癒し、セラピーと結びつけていくことで可能性は無限だと思います。こんな時代だからこそ農が輝いてくる。そう感じています。ご清聴ありがとうございました。

(了)

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明後日の時代-5

(4)より続き

 そこで東京で10年後にその時穫れたお米、いくらで買うかアンケートをとってもらったところ、平均して今の倍。中には5倍出すという人や本気でやってほしいという人もいたそうです。例えばそんな風に10年後のお米を担保に出資してもらって新規就農するなんて考え方も出来るのではないでしょうか。


 さて、それでは今あげた例などを参考に皆さんにビジネスプランを考えてもらおうと思います。

 日本にとって、今そこにある危機が自給率の低さ。ただ、自給率が低い、低いといってもスーパーに行ったら物が溢れている。こんな状況では危機感は頭で感じても心から思えないですよね。

 そこで皆さんには自給率を上げるというテーマでビジネスプランを考えてもらおうと思います。

 「農業を守る」ではなく、「自給率を上げる」・・です。自給率を上げるには農家を守ったり、新規に農業に参入したくなる人達をバックアップする手もありますが、国産のものをより多く買ってもらえば自然と自給率も上がりますよね。また家庭菜園をしやすくするというのも手でしょう。食べ物という身近なものなのでどんなものでも融合しやすいのではないでしょうか。

 目的の第一が自給率を上げるということ、そしてビジネスとして持続性があることと考えてください。

 以前、そんな番組がありましたが融資を受けるためのプレゼンをするとう感じでしてもらえればと思います。

 もちろん、今回は急な話ですので、数字的な根拠は曖昧になると思います。このような感じでどうだろうということで結構ですので考えていただければと思います。

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 まずは一人で5分考えてもらった後、グループで5分話し合ってもらって、グループごとに発表してもらいました。

 かなり短い時間でしたが、色々なアイディアが出ましたので少し紹介します。

【自給率を上げるビジネスプラン】

※観葉植物の代わりに観葉野菜や観葉果物の樹をオフィスに配達する仕事。(自然と食を感じてもらう)

※軽トラックに土を入れ、そこで野菜を育てて、それを教材に学校を回る(食育授業)

※家庭菜園インストラクターを育てて、家庭菜園のタイプに合わせて相談出来る体制をつくる。

中でも具体性があって、秀逸だったのは参加した方のスーパー経営者の方の案です。

①まず地域の放棄田を借り受ける(スーパーの信用にて)
②その放棄田をある程度整備した上で、お客様の中で家庭菜園をされたい方に貸し出す。
③育てた野菜で余ったものはスーパーの店頭で販売してもらう。(バーコードを利用した直売形式)

この案の素晴らしいところは

※放棄田の地主さんはなんとかしたいと思っているが、先祖伝来の土地ということで信用がない人には貸したくない。地域のスーパーさんが面倒をみてくれるというのであれば信用がおける。

※家庭菜園をやりたい人は沢山いるが気軽に借りることが出来ないのであきらめている、(あと技術的に不安)

※家庭菜園にとって困るのは余った野菜、捨てるのもしのびないし・・その野菜を少しでも売れるのであれば、やりがいも出てくる。

※スーパーにとっては地域の新鮮野菜は売りになる。そしてその野菜を出してくれる人はそのスーパーの常連さんになってくれる。

とまさに三方良しです。

こんな具体的な話が出ると希望が持ててきますね。


(6)に続く・・

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明後日の時代-4

(3)より続き

 以前、環境問題にも深く思ってた時期があります。もちろん今も考えていますが・・、ただあまりに考えすぎて商売っていけないことではないか?そんな風にも思ったりしてました。こんなことでいいのか・・なんて・・

 そんな時、先輩農家から、松下幸之助翁の「どんなにいいことをしていても5年やって食べていけなければ何かが間違っている。本当にいいことであれば世間は必ずついてくる。世間はそれほどバカではない」という言葉を教えていただき目からうろこが落ちました。

 正しいことをしていて方法に間違いなければ持続し広がっていけるはずだと、そして広げていくには経済的観点も今の日本では必要不可欠ですよね。


 この中で未来バンク、apバンクをご存知の方いらっしゃいますか?

 apバンクのapはアーティストパワーの略でミスターチルドレンチルの桜井さんや音楽プロデューサーの小林武史さんが未来バンクを参考に立ち上げたものになります。

 未来バンクは1996年に設立されたもので江戸川区役所勤めの田中優さんが中心となって400万円の出資金から出来たものです。

 田中優さんは元々、チェルノブイリの事件をキッカケに、反原発の運動をやられていました。ある時、2万人規模の集会になって、「これからさらに盛り上がるぞ~」と思った矢先にどんどん運動が縮小したそうです。

 それはなぜかと考えていくと、人は危機感だけでは引っ張れないということに気づいたそうです。原発は危険だ、危険だといっても今日も何も起こらない・・そうするとな~んだ大丈夫じゃないか・・というわけですね。

 優さんがもうひとつ気づいたのは原発や戦争、貧困、環境問題は違うものに見えるけど入り口が違うだけで行き着くところは同じところになるのではないかということです。

 そんな訳で持続する運動を支えていくことが出来ないか、と考えだされたのが環境にやさしい事業を営む方に低金利で貸し出す未来バンクです。

この未来バンク、色々と変っています。まずは低金利といいましたが、未来バンクの金利はなんと単利で3%になります。

 今の世の中は複利が当たり前なのですが、これってすごいことなんです。(例:500円を複利3%で借りると100年で9,329円、500年たつと1,272,755,939円(12億7千2百万・・・円、自然界ではありえない)

 そして、融資先は環境にやさしいというのが前提で審査の上貸し出されます。

そして貸す側にも借りる側にも環境にもいいということで時系列の考え方も多くとりいれています。

 例えば、未来バンクが最初に手がけたのは冷蔵庫の買い替えをすすめる方への融資。10年前の冷蔵庫と比べて今の冷蔵庫は電力消費量が1/5。そうすると冷蔵庫を買い換えると月々電気代が2000円~3000円安くなり、6年もすると借りたお金分が出ます。そしてそれからはずっ~と得していくという計算になります。もちろん電気使用量が少ないということで環境にもやさしいという貸し手にも借り手にも環境にもいいというまさに三方よしになります。

 最初はすぐにつぶれるなんて言われていた未来バンクですが、今年で12年目。出資総額も1億5千万を超えて、つぶれるどころか出資したいという人がどんどん増えてきているそうです。そして今のところ貸し倒れゼロだそうです。(信頼を裏切りたくないところから返す)

 そんな田中優さんもapバンクの音楽プロデューサー小林さんも農業をとても重視しています。我が家にも一度来ていただいたのですが、農の話しで熱く盛り上がり・・実は時系列の考え方、これからの時代一番合うのは農業ではないかとなりました。

(5)に続く・・

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明後日の時代-3

(2)より続き


 と少し私の農業に対する気持ちを感じていただけたかと思います。ただ想いだけですと、「それは大変ですね、がんばってください」となってしまうと思うんです。

 農業というと、ついつい観念的にならざるを得ないところがあります。食は大切、自給率は大切、だから守らなきゃいけないという風になるかと思いますが、「~しなけらばならない」とか「すべきである」というのはなかなか長続きしないですよね。

 今回はみなさん農業について勉強されてきてましたが・・

 この中で農業って大切だな~と思った人いますか?
 (会場ほぼ全員が手を挙げる)

 それでは実際農家になりたいと思った人?
 (手を挙げる人なし)

 息子に農業をやらせたいと思った人?
 (手を挙げる人なし)

 北風と太陽の逸話がありますが、大変だ、大変だ、大変だ、だけではいずれ行き詰ってしまうと思います。人は前向きで希望があって初めて歩をすすめることが出来るのではないでしょうか。

 
 私、日本一小さい農家といいましたが、自分でミニマム主義農家と名乗っています。ミニマム、直訳すると「最小」「最小限の」となりますが、なぜそんなスタイルかというと、日本の農業は実は小さい方がいいのではないかと思ったからです。

 それはオーストラリアやニュージーランドで見て肌で感じたのですが、日本は人件費と土地と機械代がとにかく高い、そして土地効率が悪く(水田は平らにしなければならない)自然相手の農業では大型化していくにはあまりにリスクが高いのではないかと思いました。

 そして調べてみると、農家の借金のほとんどは稲刈り機やコンバインなどの機械代なのですが、1年のほとんど車庫に眠っています。
そんなことから小さければ大型機械もいらないし、借金のない農家こそ強いものはないのではという思いもありました。今ではそれが確信になっています。

 そしてミニマム主義のもうひとつの特徴はサービス業の論理、川下からの発想を経営にもあてはめた点もあります。

 以前いたホテルもそうだったのですが、年間売り上げ目標を昨年対比、何%アップとかかげるところは多いと思います。しかしそれではあまりにも漠然としているのではないかと思います。目的があって、それを目標にするというのが本来の姿ではないでしょうか。

 私が農業を始めたのは・・それはズバリ、幸せになるため。家族5人でこのぐらいの収入があれば、(もちろん環境を考えて)精神的に豊かな暮らしが出来る、そのためにはいくらの売り上げがあればいいのか考える。そこから目標基準金額を算出します。目標基準金額は-5%以下の場合は反省するのはもちろん、+5%以上の売り上げがあった時も反省しているようにしています。どうりで余裕がなかったはずだ~なんて・・(^_^)

 これ冗談のように聞こえますが、これを取り入れますと精神的にかなり余裕が出ます。

 そんなミニマム主義は今の農業に対するひとつのアンチテーゼ。小さくても、いや小さいからこそ幸せな農業が出来るよというモデルを提案していきたいと思っています。そしてそんなやり方が全国で広がって、幸せな農家が増えてくれればというのが私の夢でもあります。

 そんなことから、今では日本の農業、農は実は小さい方が向いていると核心しています。日本の農、ひいては「食」を救うのは兼業農家と家庭菜園ではないか、そう本気で思っています。


(4)に続く

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