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2006年06月19日

Ⅱ-4. 農家であり続ける①

 新規就農、帰農、起農などという言葉が定着するくらい農業に
対しての関心はここ最近高まってきたよう思います。実際私も就
農した頃は沢山の仲間がいました。

 しかし・・・しかし今でも農家をしているのは数えるくらいに
なりました。心から残念に思います。農家を持続する、早い人は1
年でリタイヤする人もいますが、壁は3年、そして5年にあるよう
です。どうして続かないのでしょうか。

 そこには計画性の甘さや甘えはあったと思います。しかし何よ
りその先の想いではないでしょうか。「農家になる」「農にたず
さわりたい」そう思った時、普通に仕事をしたり、これまで農に
縁のなかった人から見れば大変な思い切りが必要です。その農家
になるまでの過程の大変さから、なぜ農家になりたいのか、農業
で何をしたいのかが途中からおろそかになってしまうよう思いま
す。

 最初は都会の喧騒を離れ、漠然と「農的暮らしをしたい」でも
いいんです。しかしどんな暮らしをしたいか、農で何を伝えたい
か、そのあたりをもっともっと掘り下げなくてはいけないと思い
ます。

 よく風来にも就農の相談に来る人がいます。皆さん口を揃えて
「無農薬野菜を育てたい」と言います。それはいいんです。でも
「どんな野菜を育てないの?」と聞くと「無農薬で育てやすいも
の」と答える人がほとんどです。

 それではあまりにも弱い。もちろん最初は何も分からないでしょ
う。しかし育てやすいものを育てるという考え方では、無農薬が
難しいとなったら今度はそれにも妥協してしまいます。

 それは農業、農家になるのがいつの間にか目的になってしまっ
たからではないでしょうか。今の日本で農家になるというのは支
援体制がしっかりしているので、もちろん大変ですが、思い切り
さえあればなれます。

 ただどんな暮らしをしたいかどんな農家になりたいか。そこが
肝心なのです。そこの芯をしっかりもたないと持続しません。

 農は目的でなく手段。その目的は何ですか。

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2006年06月20日

Ⅱ-4. 農家であり続ける②

 これまでに何名か新規就農の相談に来られました。年配の方か
ら男性、女性と様々です。最近思うのは女性の方が現実的で成功
するかな、ということです。

 私自身もそうですが、男の場合はロマンが先に立ちます。有機
農業者、田舎暮らしというと山に囲まれた、まるで「北の国から」
を想像しつつ突っ走ってしまいます。

 もちろんそういった思い切りのエネルギーも必要ですが、家族
がいる場合は最初の話合いが非常に重要になってきます。

 そして思い描いたイメージが大きければ大きいほど、手段と目
的が逆転してしまいます。幸せになるためには先ず、食べていか
なければなりません。子どもが病気になっても貧すれば鈍するで
自然療法で直そうとするお父さんを見て心配になる。有機農業者
で最近、離婚率が高いのもそういったギャップもあるからではな
いでしょうか。

 その点、女性は今の仕事をしつつ準備にとりかかるというとこ
ろがあり、こと農業に関してはしごくまっとうな気がします。何
せ農は一年一作も当たり前の世界。手に職がつくには時間がかか
りますし、何せ自然相手ですので読むのが大変難しいのです。

 また農を職にといっては今は色々な形態があります。独立農家
もあれば農業法人で働く、また職業のひとつして農業を選ぶとい
うのもありでしょう。

 個人的には独立農家をお奨めしますが、人によって向き不向き
もあるでしょう。農の先にあるもの。幸せになるためにそこを忘
れては農業はつまらないものになってしまいます。

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2006年06月21日

Ⅱ-4. 農家であり続ける③

 この時代に農業を選ぶ、それだけでも先見性があるな~と半分
自画自賛を含め思います。そしてこんな時代だからこそ、これか
らの農家はすべからく哲学者でなければならないと思います。ま
あ農に意識してたずさわればおのずとそうなっていきます。

 しかし実際は食べていかなければならない。そして経済性に自
立して始めて「農とは・・」と語れるよう思います。環境運動で
も往々にして思うのですが、「お金」に対して日本人は距離感、
付き合い方がとてもヘタだと思います。

 特に今の社会に対するアンチテーゼとして行う環境運動、農業
者の場合、お金に対して見て見ぬ振りをするか、憎しみまでいだ
いてしまう。稼いでる人を見ると「汚いことをしてもうけたに違
いない」みたいに。

 とことんお金に向き合う。そこが色々な意味で近道ですし、農
業を続けていけるコツかもしれません。ただお金におもねるとい
う訳ではありません、ちょうど良い距離を持つというべきでしょ
うか。

 農家になりたい人には、とにかく農業をしてみたいと漠然と考
える方と逆に有機農業とはこうだ~と思い込みが激しいタイプが
あります。

 そこに「お金」との付き合い方が入ってきて、というより生活
していく上でいやおうなく入ってきて、最初に自分が思っていた
ものと違う方向に行ってしまいます。

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2006年06月22日

Ⅱ-4. 農家であり続ける④

 漠然と農業をしてみたいと思っている人から結構沢山の相談を
いただきました。私自身漠然とした不安から農を選んだというの
もありますので気持ちは分かります。

 ただ人に相談に行く前にはもう少しどんな農業をしたいのかも
う少し掘り下げていたよう思います。

 中には相談に来る前から「大変ですよね~」「つらいですよね~」
「甘くないですよね~」と否定してもらいたがってる人もいて、
このあたりは非常に難しいです。本人が本気でなければできっこ
ありません。

 漠然とした農を思い描く人に多いのが「無農薬栽培農家」です。
イメージの先行でしょうね。そしてどんな野菜を育てたいかと聞
くと「育てやすいもの」と返ってきます。

 以前は無農薬栽培したいという人に直売店や委託販売のお店を
何件も紹介しました。無農薬栽培だと最初は見た目も悪くなるの
で市場では難しいだろうということで・・

 しかしそんな方に1年ぐらいしてあうと、もう無農薬栽培をして
いないとの事。収量が少く手間がかかるのでやってられないとの
こと。こう聞くと少し悲しくなります。そしてそうやって流され
る人は目先の利益にウエイトが行ってしまいます。

 そして3年ぐらいすると誘惑が多くなり(人によってはチャンス
かな)。無理を重ねて農地や機械に投資して、技術がおいつかず
失敗するというパターンをよく見てきました。

 私の想いとしては農は幸せへの近道だし、農業とはいわないま
でも出来るだけ沢山の人が農に携わってもらいたいな~と思って
います。

 しかし農の世界に飛び込むには「芯」が必要です。頑な過ぎて
はいけませんが、「妥協しても芯は守る」という姿勢がないと何
のために農の道を選んだのか分からなくなってきます。

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2006年06月23日

Ⅱ-4. 農家であり続ける⑤

 漠然と農業でも・・と考える人のまるっきり逆のパターンが農
業とはこうあらねばならないというタイプの人です。環境に深く
関心があったりもします。

 私自身、農業はやり方によって環境と共存出来る産業だと思っ
ていますし、深く関心があります。ただ最初からあった訳ではな
く農に携わっていくうちに、自然への畏怖を感じそこから人間は
環境の一部、まさに生かされているのだな~と感じ環境は大切だ
と体で想うようになりました。

 先述したように「芯」をもたねばこれから農業は出来ませんし、
ここからは譲れないというところも必要です。しかし逆に、こう
あらねばならないとしてしまうとこれもまた非常に窮屈になりま
す。しかも本人よりも周りが窮屈になってしまいます。これでは
幸せにはなれません。

 松下幸之助翁の言葉で心に残っているのが「どんなに社会のた
めに良いと本人が思っていても、5年経っても食べていけないよう
ではなにかが間違っている。正しいことをしていれば人は必ずつ
いてくる。それを信ぜずして何を信じるんだ」です。

 これはまさに真理でないかと思います。

 裏をかえせば発想、想い、やり方が合っていれば人はついてき
てくれるということです。自分の提供したものを選んで買ってく
れる。お金には単に金というだけでなく、信用の点数になること
もあると思います。

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2006年06月28日

Ⅱ-4. 農家であり続ける⑥

 今の世の中はあまりにも経済至上主義という点で極端だと思い
ます。しかし経済を無視出来ないのも現状です。農業でも例外で
はありません。自給自足はこれからの農家としては目指すべき方
向ではありますが、それだけにとらわれると苦しくなります。

 そして人間性と社会性と経済性。これらは相反するところがあ
ります。

 人間性とは、本人がやりたいこと、好きなこと。社会性とは社
会全体にとって良いこと。経済性とはいわずもがなですね。

 どんなにやってもやっても疲れない。楽しくてしかたがないく
らいその人にとって好きなことがある。使命感がある。そのこと
は必ず社会の役に立つと確信がもてる。この人間性、社会性はイ
コールにすることは出来ます。それをいかに経済に結びつけるか。

 人間性×社会性×(X)=経済性

 この(X)エックスを考える必要があると思います。これは志の
ある活動すべてにいえるかと思います。

 農業というのは慣行農業は別にすると、社会性はそれだけであ
ると思います。本人がやりたいというのであれば人間性も揃って
ますね。あとは何があればよいのでしょう。

 システムだったり確信だったり色々あるかと思いますが上記の
式を頭に入れておくと考え方がシンプルになってとらわれが少な
くなります。

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2006年06月29日

Ⅱ-4. 農家であり続ける⑦

  農家を続けていくコツ。それはひと言でいうとすべて受け入れ
るということでしょうか。

 これは農業に限らず何についても言えることだと思いますが、
農は特に感じさせてくれます。

 何かあったらすぐ人のせいにする風潮にある昨今において、自
然相手の農はそうはいきません。またそこに農の本質があると思
います。

 昔から農家は自然の恵みに感謝し、また恐れもいだきました。
飢饉の時には自然を恨んだことでしょう。しかしそこであきらめ
るかというとあきらめません。次の年もまた挑戦します。

 つまり自然を受け入れる、その上で全力をつくしているという
ことですね。

 そして作物は手をかければかけるほど答えてくれるのも真実で
す。経営を含め色々あるかと思いますが、すべて答えてくれます。

 不幸はその人のおかれた状況ではなく、本人が不幸と思った時
が不幸なのです。この時代に好き好んで農業の道を選ぶ人には何
か別の価値観があると思います。それを信じて受け入れる。農業
とは何と気付きの大きい職なのでしょう。

2006 06 29 | この記事へのリンク | トラックバック (0)


2006年06月30日

Ⅱ-4. 農家であり続ける⑧

  そして忘れてはいけないのが先人達の苦労です。今でこそ無農
薬、有機野菜というと一般認識されてきました。これから有機農
業者になる人にとっては色々な意味でよい環境にあるかといえま
す。

 私を含めて、有機・無農薬農業3世代目ともいえるでしょうか。
それこそ近代の日本で有機農業をやり始めた方々の最初は苦労が
絶えなかったと聞きます。

 栽培技術、周りからの目、販売経路にいたるまで、それこそ強
い意志をもっていなければ出来なかったでしょう。中には買いに
来られたお客さんに「お前の哲学は何だ?」と聞く人がいるくら
い想いが強かったのだと思います。

 今は環境の時代とあいまって農家の地位も発言権もこれまでな
いくらいに高まっています。本屋に行ってみてください。農家の
書いた本がこんなに並ぶことがこれまであったでしょうか。

 その先人の苦労を考えたら、今の私達、これから有機農業をや
る人達の苦労なんてなんぼのものでしょう。

 そしてその状況に甘んじてはいけないと思います。次の世代に
引き継ぐためにもう1歩進める。そんな意志が必要だと思います。

 人は未来への意志を持った時に簡単に挫折しなくなります。先
人の苦労の恩返しを未来の地球に返しましょう。

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